コロナウイルスとの戦いの行方は? 「全人類に感染の恐れがある」と天然痘の撲滅に貢献した疫学者は言った

「感染症のパンデミックは必ず起きる」と、天然痘の撲滅に貢献した疫学者のラリー・ブリリアントは14年も前に予測していた。そしていま、彼は人類が新型コロナウイルスとの戦いに勝つことができると断言する。だが、それにはいくつかの条件がある──。

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彼の予測は、いまや現実に

そしていま、こうしたことが現実に起こりつつある。感染症の拡大阻止を目指す団体Ending Pandemicsの理事を務めるブリリアントは、今回の新型コロナウイルスとの戦いで最前線に立つ人々に専門知識を提供している。幸いなことに、現段階では死者数は1億人からほど遠いレヴェルに抑えられているが、パンデミックが文字通り世界をひっくり返したことに変わりはない。

ブリリアントは「警告しただろう」とは言わないようにしている。だが、彼は実際に警告を発し続けてきた。講演や執筆活動にとどまらず、感染症の拡大がテーマのパニック映画『コンテイジョン』のテクニカルアドヴァイザーにも挑戦したのである。

75歳になったいま、ブリリアントはインフルエンザやポリオ、失明といった問題に取り組んでいる。彼はまた、35年の歴史をもつウェブコミュニティ「WELL」の共同創設者であり、過去にはグーグルの慈善プログラム「Google.org」のディレクターを務めたり、グレイトフル・デッドと旅をしたりしたこともある。

今回のブリリアントとの電話インタヴューは、3月17日に実施された。トランプ大統領が当初の「まったく問題ない」という態度を改め、感染拡大の阻止に向けたあらゆる措置を講じる方向に舵を切ったころだ。ブリリアントは全面的な屋内退避勧告が出されたサンフランシスコ・ベイエリアに住んでいる[編註:のちにカリフォルニア州全体に退避勧告より厳しい外出禁止令が出ている]。

電話インタヴューの直前、ブリリアントは政府関係者と電話で話をしていた。この政府関係者は、「いったい全体なんでこんなことになってしまったんだ」と言っていたという。わたしはどうすれば“ここ”から抜け出せるのかを聞きたかった
引用元:wired.jp(引用元へはこちらから)

78億人の人類全員に感染の恐れがある

──2006年にTEDで話をされたとき、わたしは会場にいたのですが、あのプレゼンテーションのタイトルは「パンデミックを食い止めるのを手伝ってほしい」というものでした。その願いはかなわなかったのでしょうか。

残念ながら、まったくだめでした。ただ、わたしが求めていたシステムは完成し、実際に使われています。以前、『コンテイジョン』という映画の製作にかかわったんですが──。

──この瞬間にもたくさんの人が観ている作品ですね。

あの映画は先見の明があると評価されました。いままさに、科学が正しかったことが証明されているわけです。過去10年か15年間、疫学の研究者たちは常に、いつかこうしたパンデミックが起きると警告し続けてきました。問題は起きるか起きないかではなく、いつ起きるかでした。人々に耳を傾けてもらうことは本当に難しいと思います。

トランプ大統領は2018年に国家安全保障会議(NSC)のティモシー・ジーマー海軍少将を解任しました。パンデミックが起きた場合の対策部門を率いていた人物で、同時に組織再編でこの部署はなくなり、スタッフ全員が辞めさせられたのです。関連する基金も削減されています。

──以前、今回のコロナウイルスは「新型(novel)」であるから深刻だと話されていました。

ノヴェル(novel)といっても、“架空”のウイルスという意味ではありません。小説(novel)のようにフィクションではないんですよ。

──そうだったらよかったんですが……。

新型とは、そのウイルスに免疫のある人間がいないことを意味します。つまり、78億人の人類全員に感染の恐れがあるのです。

──まだ研究段階で詳細は明らかになっていませんが、一度感染して回復すれば免疫がつくのでしょうか。

(新型という言葉とは矛盾するが)このウイルスに特別な目新しさは認められません。回復した人が再感染した事例も報告されていますが、これは検査結果が不正確だった可能性が高いと考えています。ただ今後、数千万人か数億人という規模で感染が広がる過程で、「本当にこんなことが起きるのか」と思うような事態が発生することはあるでしょう。

──これまでご覧になってきたなかでも最悪のケースでしょうか。

近年では最も深刻なパンデミックです。

いま求められている施策
──少なくとも、わたしの人生では経験したことのないような対策がとられています。なるべく外出しない、他人とは6フィート(1.8m)の距離を置く、人が集まるところには行かないといったことです。こうした措置は適切なのでしょうか。

わたしはいま、カリフォルニア州マリン郡の自宅で自主隔離をしています。現在の措置は正しいものです。ただ、感染拡大が明らかになってから最初の12週間、大統領は正しい指示を下していたでしょうか。答えはノーです。

米国民に伝えられていたことは嘘ばかりです。大統領は、これはフェイクニュースだ、民主党のデマだと言っていました。残念ながら、いまでもそれを信じている人もいます。公衆衛生の専門家として言わせてもらうなら、大統領のしたことは、選挙で選ばれた公的立場にある人間の行為としては、わたしがこれまで見てきたなかで最も無責任なものだったと思っています。

ただ、現在の対応(隔離、学校の一時閉鎖、イヴェント中止など)は適切です。それによって感染から完全に逃れられる、世界が永遠に安全になるといったことは無理ですが、感染拡大のスピードを抑えるという目的を達するためには完璧な施策です。

──感染者の数を示すグラフのカーヴをなだらかにするという意味ですね。

感染がピークになるときの患者数を少なくするのです。最終的な感染者の総数が減るわけではありませんが、一度に大量の人を感染させないようにすることで医療システムの崩壊を防ぎ、ワクチンを手にするまでの時間を稼ぐことができます。わたしが最も恐れているのは、12〜18カ月以内にワクチンが完成しないことです。とにかくワクチンができれば、いずれは疫学における「ゴールドリング」を得ることできます。
引用元:wired.jp(引用元へはこちらから)

マスクの着用には意味がある

──徹底した検査という意味では出遅れたわけですが、これから検査を強化していては遅すぎるのでしょうか。

そんなことはありません。検査を実施すれば、現状を数値評価することが可能になります。国内のどこで感染が多いのか知るために、確率論に基づいた無作為抽出の検査をすべきです。

わたしたちは現状を正しく把握できていません。現時点ではミシシッピ州では感染が見つかっていませんが、これは十分な検査が実施されていないからかもしれません[編註:のちにミシシッピ州でも感染が拡大し死亡事例も出ている]。ジンバブエの感染件数はゼロですが、これは検査をする能力がないからです。ジンバブエには新型コロナウイルスが存在しないという意味ではありません。妊娠検査薬のように、家庭でできる検査キットが必要です。

──もし1日だけ大統領になれるとしたら、定例会見では何を言いますか。

オバマ政権でエボラ出血熱対策の責任者を務めたロン・クラインを紹介するところから始めるでしょうね。「みなさん、ロン・クラインを紹介します。ロンはエボラ対策の“皇帝”でした。今後は新型コロナウイルスの王になります。公衆衛生と政治の両方の世界で尊敬を集める人物です。すべては彼の下で一元管理されます」といった具合でしょうか。

米国は分断された状態にあります。対策にまとめて責任をもつことができる人物としては、(国立アレルギー・感染症研究所所長の)アンソニー・ファウチが最適ではないかと思います。

──現状に恐怖を抱いていますか。

わたしは感染した場合、7人に1人が死亡する年齢層に属しています。心配していないとすれば、それは状況を注視していないだけでしょう。

ただ、恐怖感はありません。いま進められている対策によって、ウイルスの感染拡大にかかる時間を引き伸ばせると確信しているからです。時間さえあれば、ワクチンもしくは予防効果のある抗ウイルス薬ができる可能性が高まり、感染拡大の進行を妨げることができるはずです。

覚えておかなければならないのは、これはゾンビの黙示録ではないということです。人類が滅亡に向かっているわけではありません。

──マスクを着用すべきでしょうか。

N95マスクは素晴らしい製品です。マスクの穴は0.3ミクロンで、ウイルスの大きさは0.1ミクロンだから、マスクをしても無駄だと言う人はいます。ただ、体の大きなアメリカンフットボールの選手3人がドアに突進していく様子を想像してみてください。たぶん通過することはできませんね。

わたしの知っている最新データでは、マスクをしていると5倍の感染予防効果があるようです。これはかなりの数字です。ただ、医療機関が機能し、医療従事者が安全に働けるようにすることが最重要になります。したがって、マスクはそれが最も必要とされている場所、すなわち医療現場に供給されるべきです。
引用元:wired.jp(引用元へはこちらから)

達成されるべき「3つのこと」

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──どのような状況になれば感染が終息したと言えるのでしょう。

それには3つのことが達成されなければなりません。まず、全体像を正確に把握すること。感染者数などの数字は氷山の一角でしかないのか、それともピラミッドのようにすでに全貌が見えているのかが問題になります。検査数が足りないことで全体像の7分の1程度しか見えておらず、しかもわたしたちがそのことに気づいていないのであれば、今後もっとひどいことが起きるはずです。

次に、有効な治療法を確立すること。つまり、ワクチンまたは抗ウイルス薬が完成することです。そして最後に、おそらくこれが最も重要なのですが、多くの人が免疫を獲得すること。特に医師や看護師、在宅医療サーヴィスの従事者、警察官、消防士、教師といった人たちが重要になります。

検査を実施して実際に免疫がついたのか確認し、結果を識別できるシステムを確立するのです。特別なリストバンドをするとか、写真つきの身分証明にスタンプを押すといったやり方があるでしょう。このようにして教師に感染の恐れがないことがわかれば、安心して再び子どもたちを学校に通わせることができます。

同時に、老人ホームへの訪問を全面的に禁止するのではなく、高齢者のように感染すると危険が大きい集団を感染させる心配のない人を特定すればいいのです。免疫があることがわかれば、看護師は安心して感染者の治療に携わることができます。歯科医があなたの口の中を触っても感染の恐れはありません。この3つのことが起きれば、世界は正常な状態に戻ります。

──このパンデミックに明るい側面はあるのでしょうか。

わたしは科学者ですが、同時に信仰も持ち合わせています。世界の事象を見つめるときは、常に何らかのかたちでわたしたちの最良の部分を引き出すために至高の力が働いているのではないかと、自らに問いかけています。

これが始まったばかりのころは、すべての市民活動が止まると考えていましたが、そんなことはありませんでした。ミレニアル世代の若者たちが、自宅から出られない高齢者の買い物をヴォランティアで手伝っています。

また、信じられないほど多くの医療従事者が戦っています。通常よりはるかに長時間にわたって働いている勇敢な看護師、感染を恐れずに診療を続ける医師。このような奉仕の精神を目にしたのは初めてです。

今回のパンデミックが、わたしたちが「最良の自分」になるために経験しなければならないことだとは言いたくありません。ただ、いまが前例がないほど困難な時期であることは間違いないでしょう。すべてが終わったとき、第二次世界大戦の終結時と同じように、わたしたちはこの国を細かな断片に分断してしまった原因について考えることになるはずです。

ウイルスは誰に対しても平等です。わたしたちも自らをそのように見るべきではないでしょうか。人間は異なっている部分よりも似ている部分のほうが多いのです。
引用元:wired.jp(引用元へはこちらから)

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