機械保全技能士は、機械設備のメンテナンス、修理、保守を行うための高度な技術と知識を持つことを証明する資格です。製造業やプラント運営、エネルギー施設などでは、機械設備が円滑に稼働し続けることが最も重要であり、そのために設備の適切な保守・管理が欠かせません。機械保全技能士は、機械設備の長寿命化を実現し、トラブルの発生を未然に防ぐ役割を担います。そのため、この資格は、企業にとって非常に価値のあるものであり、機械設備のトラブルシューティングや予防保全を効率よく行うための技術者としての信頼を得るために不可欠です。
近年、製造業においては効率化やコスト削減が求められており、機械設備の維持管理の重要性は増しています。設備の故障や不具合は、稼働停止や生産遅延、品質低下などを引き起こし、企業に大きな損失を与える可能性があります。機械保全技能士は、このようなリスクを最小限に抑えるため、適切な保守・管理を行い、設備を長期間にわたって安定的に稼働させる役割を果たします。
試験内容と評価基準
機械保全技能士の試験は、知識試験と実技試験から成り立っており、受験者は機械保全に関する理論的な知識と実務的な技能の両方を身につけていることを示す必要があります。試験では、次のような内容が評価されます。
機械設備の基礎知識 試験では、機械設備の構造や動作原理、各部品の役割など、機械の基本的な知識が問われます。受験者は、設備の種類や機械部品の特性を理解し、それに基づいて適切な保守作業を行うための基本的な知識を有していることが求められます。特に、機械設備が正常に稼働し続けるために必要な管理方法や、保守・点検の手順についても理解していることが評価されます。
故障診断と修理技術 機械保全技能士は、故障やトラブルが発生した際にその原因を迅速に特定し、修理を行う能力が必要です。試験では、機械の故障を診断し、その修理方法を実践的に示すことが求められます。受験者は、故障箇所を正確に特定し、適切な部品交換や調整作業を行うための実務的なスキルを持っているかが評価されます。また、修理を行う際の作業手順や注意点、必要な工具や部品の選定に関する知識も求められます。
予防保全の実施 機械保全の基本的な考え方は、予防保全です。機械設備が故障する前に、その兆候を早期に発見し、適切な対策を講じることが最も重要です。試験では、予防保全の計画や実施方法、点検項目の設定に関する知識が問われます。受験者は、設備の定期点検や摩耗部品の交換など、機械の寿命を延ばすために必要な作業を計画的に実施する能力を示さなければなりません。
安全管理と作業環境 機械保全作業は、安全が最優先で行われるべきです。試験では、作業中の安全管理に関する知識や、作業環境を適切に整備する方法についても評価されます。機械の修理や点検作業においては、事故やケガを防ぐために、適切な安全対策を講じることが不可欠です。受験者は、安全作業に必要な基準や手順を理解し、それを実行する能力が求められます。
資格取得後のキャリアパス
機械保全技能士の資格を取得すると、さまざまな分野で活躍することができます。主に製造業やプラント、エネルギー業界などでは、機械設備の保守管理が日常的に行われており、機械保全技能士は、その分野での中心的な役割を担うことができます。例えば、工場内での設備の点検や修理、プラントの運転管理や維持管理を担当することができます。
また、資格を取得することで、キャリアアップの道も広がります。技術的なスキルを磨き、より高度な設備管理や保全業務を担当することができるようになります。さらに、設備の最適化や新技術の導入を行うためのプロジェクトマネジメントに携わることも可能です。機械保全技能士としての経験を積んだ後、リーダー職や管理職に昇進する道も開かれています。
機械保全技能士の合格基準は、各等級とも共通で次のとおりです。
学科試験は加点法で100点満点中65点以上
実技試験は減点法で41点以上の減点がなければ合格
機械保全技能士は、機械保全に必要となる知識や技能を証明する国家資格です。試験は学科試験と実技試験の2つがあり、両方に合格することで「技能士」と称することができます。
機械保全技能士の試験は、厚生労働大臣指定試験機関である公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が行っています。ものづくり分野の国家検定で受検者数が最も多く、累計受検者数は92万人を超えています。
合格率は等級によって異なり、2021年度は特級が39.5%、1級が27.7%、2級が32.2%、3級が71.2%でした。級が上がるほど合格率が下がり、難易度が高くなっています。
学科・実技のいずれか一方の試験に合格した場合、次回以降に不合格となった試験のみを再受検し、合格することで取得できる試験免除制度が設けられています。