近年の都市再開発や老朽化建築物の増加に伴い、解体工事施工技士の重要性が高まっている。この資格は、解体工事における計画から施工管理まで、専門的な知識と技術を有する技術者を認定するものだ。国土交通省が認定する民間資格として、建設業界で高い評価を得ている。
解体工事施工技士は、建築物の解体工事における安全管理、環境保全、施工計画の立案など、多岐にわたる専門知識を要する。特に近年では、アスベスト対策や建設資材のリサイクル、周辺環境への配慮など、環境負荷を最小限に抑えた解体工事の実施が求められており、その役割は一層重要性を増している。
資格取得には、実務経験と専門的な知識の習得が必要とされる。試験は、学科試験と実地試験の2段階で実施され、解体工事の計画、施工技術、安全管理、関係法令など、幅広い分野からの出題がある。合格率は例年40%前後で推移しており、決して容易な資格ではない。
特筆すべきは、この資格の取得が建設業界でのキャリアアップに直結する点だ。解体工事業の登録基準において、解体工事施工技士は主任技術者として認められており、工事現場での責任者としての地位を確立できる。また、解体工事業の許可申請時における営業所専任技術者としても認められるため、企業にとっても重要な人材となる。
建設業界では、2024年度以降も首都圏を中心とした大規模再開発プロジェクトが予定されており、解体工事の需要は今後も堅調に推移すると予測されている。さらに、地震や災害による被災建築物の解体、高度経済成長期に建設された建築物の更新需要など、解体工事施工技士の活躍の場は着実に広がりを見せている。
厚生労働省の統計によると、建設業就業者の高齢化が進む中、若手技術者の育成が業界全体の課題となっている。この状況下で、解体工事施工技士の資格を持つ技術者の需要は年々増加傾向にあり、求人倍率も高水準を維持している。
また、環境配慮型の解体工事への要請が強まる中、解体工事施工技士には新たな知識や技術の習得も求められている。建設資材の分別やリサイクル技術、騒音・振動対策、粉じん対策など、環境負荷を最小限に抑えた解体工事の実施には、高度な専門知識が不可欠だ。
業界関係者からは、「解体工事施工技士の資格保有者は、現場での即戦力として高く評価されている」との声が聞かれる。特に、安全管理や環境配慮の面での知識・経験を有する技術者は、企業からの需要が高く、処遇面でも優遇される傾向にある。
今後は、ICT技術の活用やBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)との連携など、解体工事の分野でもデジタル化が進むと予想される。解体工事施工技士には、従来の知識・技術に加え、これらの新技術への対応力も求められることになるだろう。
解体工事施工技士の試験の合格基準は、次のとおりです。
四肢択一式(50問)で100点中50点以上
記述式(5問)で100点中50点以上
合計で110点以上
四肢択一式と記述式のどちらかでも50点を下回ると不合格となります。
解体工事施工技士の試験は、難易度が高い試験ではありません。第1回から第27回までの平均合格率は56.3%で、直近3年間も50%台を維持しています。合格するには、50~100時間程度の勉強が必要とされています。解体工事施工技術講習で配布されるテキストや資料を活用し、過去問を繰り返し解くのが効率的な勉強方法です。また、リサイクル法や廃棄物処理法など法律に関する問題も出題されるため、そのあたりの勉強も必須です。